なぜ法人のパソコンは「無料」で引き取ってもらえるのか──無料回収が成立する仕組みと、渡したあとも消えない責任

株式会社WELL(ウェル) 営業部

オフィスのパソコンを一斉に入れ替えたあと、使わなくなった旧パソコンが倉庫や会議室の隅に積まれたままになっていませんか。
そろそろ処分しなければと見積もりを取ってみると、想定していた以上の金額になってしまい、処分のために稟議を上げるのも、少し億劫になってしまいます。そんなとき、「法人向けのパソコン無料回収」という案内が届いたらどうでしょう。

費用をかけずにまとめて処分できるなら、利用しようと考えるのは、むしろ合理的な判断に思えます。
しかし、なぜ法人のパソコンは「無料」で引き取ってもらえるのでしょうか。企業にとって本当に確認すべきなのは、「無料か有料か」だけなのでしょうか。

この記事では、法人向けパソコンの無料回収が成立する仕組みとパソコンを手放したあとも企業に残る責任、そして処分を依頼する前に確認しておきたいポイントについて解説します。          

「無料で引き取ります」に、旧パソコンを渡そうとしていませんか

無料回収サービスの注意点入れ替えで不要になったパソコンを、できるだけ費用をかけずに処分したい。企業としてそう考えるのは、決して不自然なことではありません。
特に数十台単位で処分するとなれば、費用だけでなく、社内手続きや業者との調整にも手間がかかります。法人向けパソコン無料回収サービスがあれば、「これなら費用も手間も抑えられそう」と考えるのは当然でしょう。
ただ、渡す前に一度だけ確認しておきたいことがあります。何も確認せずに渡してしまって大丈夫か、ということです。
法人のパソコンには、顧客情報や取引先情報、社内資料、メール、各種アカウント情報など、外部に流出すれば企業に大きな影響を及ぼす可能性のある情報が保存されていることがあります。
「もう使わないパソコンだから」といって、そこに保存されているデータまで不要になるわけではありません。

 

なぜ無料で引き取ってもらえるのか

無料回収が成立する理由では、なぜ無料で引き取ってもらえるのでしょうか。
その理由は、回収する側から見ると、企業が不要になったパソコンが「まだ価値のあるもの」だからです。

 

引き取った端末には、中古市場での売値がつく

回収されたパソコンは、状態やスペックなどに応じて、中古市場で再販されることがあります。特に法人で使われているパソコンは、業務用として一定のスペックを備えているものも多く、一度にまとまった台数が入れ替わるケースもあります。再販する側から見れば、一定の品質を備えた端末をまとめて仕入れをするため、価値のある仕入れになります。
企業にとっては「処分したい旧パソコン」でも、回収する側にとっては「再び販売できる商品」。この立場の違いが、無料回収が成立する理由の一つなのです。

 

「動く状態のまま流通させる」ことが前提のビジネス

データ消去の重要性

再販を前提とするなら、回収したパソコンはできるだけ価値を保った状態で流通させる必要があります。
端末を壊すのではなく、再び使える状態で市場へ出すことが基本です。もちろん、再販されるパソコンに必ずデータが残っているという意味ではありません。
重要なのは、中古として販売される前に
どのような方法でデータを消去したのか、そして消去したことを確認できるのかということです。
無料回収というメリットだけを見るのではなく、社外へ渡す前にデータが適切に処理されているかを確認することが大切です。

 

無料であることは、その端末が「資産として」扱われる

企業にとっては、入れ替えによって役目を終えたパソコンは「不要物」ですが、回収する側にとっては、中古市場で販売できる「資産」です。
無料回収が成立するのは、引き取る側にとって、そのパソコンに再販価値があるからです。同じ一台のパソコンでも、立場によって見え方が変わります。
企業側が忘れてはいけないのが、そのパソコンには重要なデータが入っている可能性があることです。
本体は不要になっていても、保存されている情報まで不要になるわけではありません。
企業にとっては、価値のある情報が入った資産である一方、適切に処理されなければリスクにもなります。

 

有料・大手なら安心なのか─54TBが流出した事件

業者選びのポイント

「無料回収はちょっと不安。それなら費用を払って、きちんとした業者に任せればいいのではないか」

「大手企業に依頼すれば、さすがに安心だろう」そう考えるのは自然なことです。ところが、実際には「有料か無料か」「大手か中小か」だけでは、情報流出を防げないことがあります。
そのことを象徴するのが、2019年に発覚した神奈川県庁のHDD転売・情報流出事件です。

この事件は、神奈川県が富士通リースからレンタルしていたサーバーのハードディスクを交換・返却した際、同社から処分を委託された情報機器リユース会社(ブロードリンク社)の元従業員が、破壊前のハードディスクを持ち出して転売。
転売された18台のハードディスクには、最大約54TBの行政文書が保存されており、同人物が持ちだして転売した記憶媒体は計3,904個にのぼることが明らかになりました。
※参考:神奈川県HDD転売事件、元社員に有罪判決 情報機器をネットオークションで転売

これは「怪しい業者に頼んだから起きた」という単純な問題ではないということです。正規の委託ルートであっても、実際の処理工程で不正な持ち出しが起きる可能性があります。
だからこそ、企業が見るべきなのは「どこの会社に頼むか」だけではありません。
何を、どこで、どのように処理したのか。その工程を確認できるか。ここが、業者を選ぶうえで重要になります。
WELLも、機密情報書類の処理だけでなく、グループ会社全体で産業廃棄物の適正処理に対応できる体制を整えています。
もう一つ知っておきたいのが、パソコンを排出する企業側の責任です。

 

渡した瞬間に、責任が消えると思っていないか

企業がパソコンを業者へ渡した瞬間に、その責任まで業者へ移るのでしょうか。答えは、そう単純ではありません。
専門業者に依頼したから、あとは任せておけばいいと考えてしまいがちですが、企業には、パソコンを適正に処理するための法的な責任があります。
特に法人パソコンを廃棄物として処理する場合には、処理を委託したあとも、排出した企業側が適正な処理を確保するための確認が重要になります。
パソコンを業者に引き渡すことは、責任を手放すこと」ではなく、適切な処理を委託することなのです。では、企業側には具体的にどのようなことが求められるのでしょうか。

 

法人のパソコンは産業廃棄物。原則としてマニフェストで管理

家庭から出るパソコンと、企業や官公庁などの事業活動から出るパソコンでは、処理の扱いが異なります。
事業活動に伴って不要になったパソコンを廃棄物として処理する場合、産業廃棄物として適正に処理する必要があります。
その際に重要になるのが、産業廃棄物管理票(マニフェスト)です。
マニフェストは、排出した産業廃棄物が、委託した処理業者によって適正に処理されたことを確認・管理するための仕組みです。
企業がパソコンを業者に引き渡した時点で回収してもらったから終わりではありません。どこへ運ばれ、どのように処理されるのか。
委託した廃棄物が適正に処理されたことを確認することが、重要になります。

すべての事業系パソコンでマニフェストが必要になるとは限りませんが、社のパソコンをどのような仕組みで処理するのか、その処理方法や委託先の制度・許可まで確認することが、法人パソコンを適正に処理するための第一歩です。

 

メーカー回収に出しても、データ消去は自社の責任

メーカーの回収サービスに出すから、データのことまで心配しなくていいと捉えてしまう企業もあるかもしれません。しかし、メーカーや専門の回収サービスにパソコンを引き渡す場合でも、その前に保存されているデータをどうするのかは、排出する企業側で確認しておく必要があります。
パソコン3R推進協会も、事業系パソコンのリサイクルについて、排出する事業者に対して、パソコンに保存されているデータをあらかじめ消去するよう案内しています。
パソコンを回収に出す前に、自社でデータを消去するのか、データ消去まで含めて処理を委託するのか。まずはその役割分担を明確にすることが大切です。
「どこに回収してもらうか」だけでなく、
「データを誰が、いつ、どのような方法で消去するのか」まで確認してから手放すことが重要なのです。

 

廃棄物処理法は「最終処分が終了するまで」の適正処理を求めている

企業に求められる法的責任では、なぜ「業者に渡したから終わり」ではないのでしょうか。その背景にあるのが、廃棄物処理法で定められている排出事業者責任です。
廃棄物処理法第3条第1項では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と定められています。
つまり、
事業活動によって生じた廃棄物については、処理を業者に委託したからといって、排出した企業の責任がなくなるわけではありません。

さらに同法第12条第7項では、排出事業者に対して、最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるよう努めることが求められています。ここで重要なのは、「業者に渡した時点」ではなく、その後の処理まで含めて適正に行われることです。
環境省も、排出事業者責任に基づく措置についてチェックリストを公表しています。これは、廃棄物を業者に引き渡して終わりではなく、委託先の選定や処理状況の確認など、排出事業者として必要な対応を行うことが重要だという考え方です。

「回収業者に渡したから、あとは業者の責任」と考えるのではなく、適正に処理される業者を選び、その処理を確認できる状態にしておくこと。それが、企業がパソコンを手放す際に求められる責任なのです。
※参照:環境省HP排出事業者責任の徹底について

 

無許可の業者に渡した場合、問われるのは排出した企業側

業者が処理を適切に行わなかったから、悪いのは業者であって自社には関係ないと考えるかもしれません。
しかし、排出事業者には、処理を委託する業者を適切に選ぶことも求められます。東京都環境局も、いわゆる「即日回収」「無料回収」を掲げる不用品回収業者について注意喚起しており、無許可で廃棄物の収集運搬を行うことは法律で禁止されています。

ここで注意したいのが、「許可を持っている業者だから大丈夫」と一括りにしないことです。たとえば、古物商の許可を持っていたとしても、それだけで産業廃棄物の収集運搬や処分ができるわけではありません。何の許可を持っていて、その許可で何ができるのか。そこまで確認する必要があります。

もし不適正な処理を行う業者へ委託していたことが判明すれば、排出事業者側も措置命令の対象となる可能性があります。
「知らなかった」「業者に任せていた」だけでは済まないケースがあるということです。
見るべきなのは、必要な許可を持ち、適正な処理を行い、その工程を確認できる業者なのかということです

 

「無料」と「有料」の差額は、何を買っているのか

無料回収と有料処理の違い

ここまで見てくると、「では、有料の処理サービスには、無料回収にはない何があるのか」と疑問に思うかもしれません。もちろん、料金を払えば必ず安全というわけではありません。費用によって何を確認できる状態にしているのかです。
有料の処理では、単に「パソコンを捨てるための費用」を払っているのではありません。企業が後から「このパソコンは、誰に、どのような方法で処理を依頼し、確実に処理されたことをどう証明できるのか」と問われたときに、説明できる状態をつくるための費用でもあります。

具体的には、大きく3つの意味があります。

有料処理のメリット

① どの許可を持つ相手に渡したのかという裏づけ
まず確認したいのが、処理を委託する相手がどのような許可を持っているのかということです。
廃棄物として処理するのであれば、必要な許可を持つ事業者なのか。その許可によって、実際にどこまでの処理ができるのか。「許可あり」と書かれているだけではなく、自社が委託しようとしている処理に適した許可なのかまで確認することが重要です。

② 台数分ではなく、1台ごとに残る記録
次に重要なのが、処理した事実を1台ごとに追える記録です。
「20台処理しました」という記録だけでは、個々のパソコンが本当に処理されたのかを確認することはできません。どの端末を処理したのか、いつ処理したのか、どのような方法で処理したのか。1台ごとの情報が記録として残っていれば、処理後に確認が必要になった場合にも、追跡しやすくなります。
ただ、1台ごとの処理記録を残すには、その分の管理や確認に手間がかかります。 

③ 「消えた」のではなく「壊れた」という証拠
そして、物理破壊を行う場合には、「データが消えた」という説明だけでなく、「記憶媒体そのものが破壊された」ことを確認できるという意味があります。
もちろん、リース契約などの事情によって物理破壊ができないケースもあります。その場合は、契約内容に応じた適切なデータ消去方法を選ぶ必要があります。
一方、物理破壊が可能な場合には、破壊した記録や写真などを含む機密抹消証明書によって、処理した事実を後から確認できる仕組みを整えることができます。
有料処理にかかる費用を、単なる「処分費」と考えるだけでは、その価値を十分に捉えられません。 

誰に渡したのか。何をしたのか。本当に処理されたのか。企業自身が説明できる状態をつくるための費用でもあるのです。

 

そのパソコンは、資産ですか、リスクですか

ここで、最初の問いに戻ってみましょう。そのパソコンは、自社にとって「資産」でしょうか。それとも「リスク」でしょうか。
無料で引き取ってもらう場合、その端末を「まだ価値のある資産」として再利用・再販につなげる方法の一つといえます。
一方で、そのパソコンに顧客情報や取引先情報、社内資料などの機密データが保存されているなら、企業側にとっては話が変わります。もう使わない端末であっても、そこに情報が残っている限り、それは単なる不要品ではありません。
そう考えると、処分の方法も変わってくるはずです。もちろん、すべてのパソコンを物理破壊しなければならないということではありません。リース契約などによって物理破壊ができない場合もありますし、端末の用途やデータの内容によって、適切な処理方法も変わります。
「このパソコンを自社では何として扱うのか」を考えたうえで、手放し方を選ぶことです。

神奈川県のHDD流出事件のように正規の委託ルートであっても、その先の工程で不正な持ち出しが起きれば、情報が流出する可能性があります。
だからこそ、業者の看板だけを見るのではなく、
渡したあと、どこで、誰が、どのように処理するのか。その工程を確認できるのか。処理したことを、後から証明できるのか。という視点が重要になります。
最後まで責任を持って手放せるのか。旧パソコンの処分を考えるとき、まずはそこから考えてみてはいかがでしょうか。

 

渡す前に確認する4つのこと

業者選びの4つのポイント「無料か有料か」だけでは、処分先の安全性は判断できません。では、実際に業者へ依頼するとき、何を確認すればよいのでしょうか。
見積もりを取る段階で、次の4つを質問してみてください。

①「どのような許可を持っていますか?許可番号も教えてください」
まず確認したいのが、相手が何の許可を持っているのかです。「許可があります」という回答だけで終わらせず、許可の種類や許可番号まで確認しましょう。
特に、古物商の許可と産業廃棄物の許可では、できることが異なります。
自社が手放すパソコンをどのような扱いで処理するのかを確認したうえで、その処理に必要な許可を持つ事業者なのかを確認することが大切です。

②「再委託はありますか?ある場合、誰がどこで作業しますか?」
次に確認したいのが、自社から渡したパソコンが、その後さらに別の業者へ渡されるのかということです。
もし再委託があるなら、どの会社がどこで作業してどの工程を再委託するのかまで確認してみましょう。窓口になっている会社だけを見ていても、実際にデータ消去や破壊を行う事業者が別会社であれば、処理工程は見えにくくなります。だからこそ、パソコンを渡したあとに、誰がどこで処理するのかを確認することが重要です。

③「1台ごとの処理記録は出ますか?」
「まとめて○台処理しました」という記録だけではなく、1台ごとに処理したことを確認できる記録が残るを聞いてみましょう
たとえば、パソコンの管理番号や製造番号などと処理記録が紐づいていれば、「どの端末を、いつ、どのように処理したのか」を後から確認しやすくなります。
さらに、処理したことを証明する
機密抹消証明書が発行されるかどうかも確認しておきたいポイントです。
「確かに処理した」という説明だけではなく、
処理した事実を記録として残せるか。これは、企業として説明責任を果たすうえでも重要になります。

④「社外へ持ち出す前に処理できますか?」
最後に確認したいのが、パソコンを社外へ持ち出す前にデータ消去や破壊を行うという選択肢があるかです。
パソコンに機密情報が残った状態で社外へ運び出す場合、運搬中や保管中にも情報漏えいのリスクが生じます。そのため、可能であれば、社内や管理された区域内で処理を行い、情報を無効化した状態にしてから搬出する方法も検討できます。

この4つを確認するだけでも、単に「無料だから」「安いから」という理由だけで処分先を決めるのではなく、処理の透明性や管理体制まで比較できるようになります。

 

まとめ

法人のパソコンを処分するとき、「無料か有料か」だけで判断するのは簡単です。
しかし、本当に確認したいのは、その先です。無料で引き取ってもらえるパソコンには、中古市場で再販できるという「資産」としての価値があります。
一方で、企業にとっては、機密情報が残ったままのパソコンが「リスク」になる可能性もあります。

無料か有料かではなく、自社にとってそのパソコンが「資産」なのか「リスク」なのかを考え、適切な処理方法と業者を選ぶことが大切です。
WELLでは、機密文書の処理をはじめ、企業から出るさまざまな廃棄物について、適切な処理方法をご案内しています。現在、法人パソコンの処理についてはサービス開始に向けて準備を進めています。

「このパソコンは、どう処理するのが適切なのだろう」
「今の処分方法で問題ないのだろうか」
処分方法に迷っている段階でも構いません。現在の処理方法や、データ消去について確認したいことなど、お気軽にお問い合わせください。


株式会社WELL(ウェル) 営業部

ビジネスの中で廃棄される機密書類や、不要になった古紙などを、迅速な回収、安全な再資源化を行なう機密書類処理のリーディングカンパニーの営業部です。