5年経過後のカルテ、どう捨てる？失敗しない安全・確実な処分法まとめ

医療機関にとって、患者さんの大切な情報が詰まったカルテ。そのカルテの適切な管理・処分は非常に重要です。
診療が完結した日から5年間は保存義務があるカルテですが、保存期間を過ぎたカルテ、どう処分すればいいのか迷っていませんか？
カルテには個人情報が含まれるため、処分するときは情報漏洩のリスクを最小限に抑える必要があります。
今回は安全にカルテを処分する方法について、具体的な対策や注意点をまとめました 。          

カルテの保存義務と保存期間を簡潔に理解しよう  

医療機関には、患者の診療内容を記録したカルテ（診療録）を、最終診療日から5年間保存する義務があります。
これは医療法に基づくもので、個人経営のクリニックや歯科医院も例外ではありません。
さらに、労災診療を受けた患者の記録や訴訟リスクが想定される診療内容については、5年を超えて保存することが望ましいケースもあります。

また、カルテ以外にも、医療機関が保管しなければならない書類は多岐にわたります。
例えば、処方箋や検査結果、レントゲン画像などは原則として3〜5年間の保存義務があります。
手術の同意書や説明書なども、通常は5年間の保存が基本ですが、医療機関では万が一の訴訟に備えて10〜20年保存することも少なくありません。

このように、医療の現場では「保存すべき書類」が膨大に存在し、適切な保管と管理が求められます。
電子カルテであっても紙カルテと同様の保存義務が課されており、情報の完全性を維持しながら保管できる体制づくりが重要です。
そのため、保管スペースの確保や定期的な見直し、処分も計画的に行うことが必要となるでしょう。

カルテの適切な廃棄が求められる理由

保存期間が過ぎたカルテをそのまま放置しておくことには、スペースの問題だけでなく、情報漏洩という重大なリスクが伴います。
カルテには患者さんの氏名、住所、病歴、診療内容などの個人情報が記載されており、適切な処分を怠れば、患者さんとの信頼関係を大きく損なうだけでなく、損害賠償や行政処分の対象となる可能性はおおいにあるでしょう。

廃棄のタイミングは、保存期間の満了後に限らず、クリニックの閉院や統合、電子カルテへの移行といった場面でも訪れます。こうした節目にあわせて、紙カルテをどう安全に処理するかを考えなくてはいけません。
実際に、カルテの処分を誤ったことで第三者に情報が流出する事故も報告されており、廃棄作業の一つひとつが慎重に行われるべき重要な業務であることがうかがえます。

保存するだけでなく、「どう処分するか」にも目を向けることが、これからの医療情報の管理に欠かせない視点といえるでしょう。

カルテ処分で絶対にやってはいけないこと

誤った方法でカルテを処分してしまえば、重大な情報漏洩の事故につながる危険性があります。
個人情報が詰まった紙カルテを適切に扱わないことは、患者さんへの信頼を損なうだけでなく、医療機関としての信用を揺るがすリスクになります。
特に避けるべきNG行動を具体的に見ていきましょう。

 一般ゴミと一緒に廃棄するのは絶対NG

  カルテの保存期間が過ぎたからといって、紙ごみとして他の廃棄物と一緒に処分するのは、最も危険な方法です。
収集や運搬、分別の過程で第三者の目に触れる可能性が高く、どの場面でも個人情報の漏洩リスクが考えられます。

実際に、カルテを廃棄処理場に搬送中、委託業者のトラックから路上にカルテが落下する事故も過去に発生しました。ある大学病院で、保存期間が過ぎた紙カルテやエコー写真などの機密文書を専門業者に委託して処分していましたが、委託業者による廃棄処理の途中で誤りが発生し、患者の紙カルテやエコー写真が運搬中のトラックから路上に飛散・落下する事故です。

こうした事故は再発防止のために、管理体制の見直しと廃棄プロセスの見直しを徹底することになりました。

シュレッダーだけでは不十分な場合も      

オフィスで使われる小型シュレッダーでは、紙を完全に読めないレベルまで裁断することができない場合があります。
また、大量のカルテをファイルと紙に分別をしてから処分することになるので、時間と労力がかかり、通常業務の傍らで作業をするのは難しいでしょう。

手軽で安全に見えるシュレッダー処理ですが、実は再生紙としてリサイクルがしづらく、環境面でも課題が残る処理方法です。

スタッフ任せで起きてしまった情報漏洩事故  

カルテの処分を院内スタッフに任せきりにするのも大きなリスクです。
誤って保存期間前のカルテを処分してしまう、廃棄対象外の書類まで紛れ込んでしまうといったミスを起こしやすくなります。

注意したいのがアルバイトやパート社員への丸投げです。大手の病院は徹底管理されていますが、個人のクリニックなどは、責任の所在があいまいになり、誰も悪気はなかったのに、情報漏洩が起きたという事態を招くことになりかねません。

カルテ処分は、法律上のルールや院内の信頼体制に関わる、非常にデリケートな業務です。
思い込みや慣習に頼らず、安全性と確実性を最優先にした対応が不可欠です。

安全かつ効率的なカルテ処分方法

日々多忙な医療現場において、カルテを安全かつ効率的に処分するには、信頼できる外部の専門業者に委託するのも有効な手段です。
安心して導入できる具体的な方法をご紹介します。

機密文書専門業者に依頼するのが最も安全

カルテには個人情報が含まれるため、搬出から処理完了までの一貫したセキュリティ体制が整っていることが重要です。
専門業者に依頼すれば、専用車両による回収、密封保管、破砕・溶解処理といったすべての工程が、情報漏洩リスクを最小限に抑えながら実施されます。

さらに、「情報抹消証明書」や「粉砕証明書」、「溶解証明書」といった書類も発行されるため、コンプライアンス対策や監査対応にも安心です。

セキュリティボックスや溶解処理サービスを活用

病院内に投入式の「セキュリティボックス」を設置する方法がおすすめです。
日常業務の中で出てくるカルテ以外の機密書類（経理書類・経営資料など）も一括で投入可能なため、職員の作業負担を大きく軽減できます。

回収時にはボックスごと密封状態で引き取られ、そのまま破砕処理や水を使った溶解処理にかけられます。溶解処理は、情報を完全に読み取れない状態にした上で、再生紙としてリサイクルされるため、環境にも配慮した処分方法として注目されています。

WELLでは、ファイルと紙を仕分けせずにそのまま処分できるので、医療機関にとって大きな負担軽減につながります。ただし、ファイル素材と紙類は均等に混ぜて処理する必要があるため、すべてのカルテを即日で廃棄するのは難しい場合もあります。
また、カルテにレントゲン写真が多く含まれている場合は、再生の過程でトラブルが生じる恐れがあるため、事前に分別しておくことが必要になってきます。あらかじめ業者に相談しておくとスムーズです。
お預かりしたカルテは、セキュリティが確保された専用室で厳重に管理し、段階的に処理が進められます。情報漏洩のない、確実で廃棄を徹底している点はご安心ください。

費用相場と業者選びのポイント

カルテの処分を専門業者に依頼する場合、気になるのが「費用」と「業者の信頼性」です。
業者によって価格やサービス内容に差があるため、複数社を比較し、ニーズに合ったサービスを選ぶことが大切です。

一般的な相場は、箱単位（1箱あたり2000円程度）のプランが多く、処理方法（破砕／溶解）、回収頻度、セキュリティレベルによって金額が変動します。
選定時には、以下のポイントを押さえると安心です。

業者選びで確認すべきポイントとしては、4つあります。

・回収から処分完了までのスピード… 急ぎの処分が必要な場合、スピーディーに対応してくれる体制があるかを確認しましょう。

・情報抹消証明書や粉砕証明書・溶解証明書の発行… 書類による証明があることで、内部監査や外部調査に対応できるエビデンスになります。必ず発行の有無をチェック。

・業者の処理施設の性能（無開封・無選別対応か）… 書類を分別せずに箱のまま投入できるタイプの破砕機を持つ業者なら、作業効率が大きく向上します。
特に医療機関では、膨大な機密文書を安全に、短時間で処理できる能力がある業者が望ましいです。

・セキュリティ体制の実績（例：メガバンクや官公庁での導入実績）… 信頼性の高い機密文書処理業者は、医療業界以外でも高いセキュリティが求められる機関からの実績があると、安心して任せられるかどうかの重要な判断材料になります。

費用面はもちろんですが、「どれだけ安全・確実に処理してくれるか」を重視することで、トラブルのないカルテ廃棄が実現できます。

カルテ処分をきっかけに業務効率化を進めよう

  カルテの安全な処分は、情報管理の強化だけでなく、院内の業務環境を見直す絶好の機会です。ただ「捨てる」だけで終わらせず、今後の運用や体制改善にどうつなげるかがポイントとなります。

・保管スペースの最適化
保存期間を終えた紙カルテを処分することで、物理的な保管スペースを大幅に確保できます。
棚や倉庫にぎっしりと詰まっていた書類がなくなることで、院内の動線が改善されたり、新たな用途にスペースを活用したりと、好影響をもたらします。
空いたスペースには、最新の医療機器の導入や、患者サービス向上のための設備投資に充てるのもいいでしょう。

・デジタル管理へのシフトも視野に
カルテ処分を機に、今後の記録管理を電子カルテへ移行する方針を検討するのも有効です。
紙カルテに比べて、保管コストの削減・検索性の向上・セキュリティ面での強化といった多くのメリットがあります。

特に、検索のしやすさや情報の一元管理は、診療効率やチーム医療の質を高める要素としても注目されてあり、将来的なDX（デジタルトランスフォーメーション）推進の一環として、段階的な導入を考える医療機関も増えています。

紙カルテの処分は「終わり」ではなく、医療体制を一段階アップデートするはじまりです。
このタイミングを活かして、業務効率化や医療の質向上につながる環境づくりを進めてみてはいかがでしょうか。

まとめ

カルテは、個人情報が含まれるため、管理方法によって信頼も左右されます。
カルテを医療機関が独自に処分しようとすると、情報漏洩など重大なリスクが伴います。
カルテの廃棄は必ず機密文書処理の専門業者に依頼して、安全かつ確実に行いましょう。

また、カルテは多くの場合ファイルに綴じて保管されており、処分の際にはその仕分けに多大な時間と労力がかかります。

カルテの廃棄は単なる紙の処分ではなく、患者さんの個人情報を守るための重要な責務です。
また、それは医療機関の信頼を左右するリスク管理の一環でもあります。
安全なカルテの廃棄を行い、患者さんからの信頼を守っていきましょう。